広にある「内藤フルーツ」で安浦町実成新開「木坂勝治」さんのイチジクを入手しました。
1パック1,000円以上、スーパーで売っているものの2~3倍、シャインマスカット級の価格。
よく熟れて柔らかく糖度がとても高い、それだけでジャムのよう。プチプチした食感も絶妙。
食べてみて、それだけの値打ちがあると思ったのは、私だけでしょうか。
味わいに加え、9月12日の中国新聞記事(翌13日このブログで紹介)で生産者の苦悩と努力を知りました。
また、「安浦町史 通史編」に「第五章 現代、第一節 太平洋戦争後の安浦」に「実成新開開拓地」という一項目があり、この土地の戦後80年をみることができます。
塩田を海軍が海兵団用地として買収したところで終戦を迎え、農地として利用することになり、入植者を募集したところ、多くの応募者がありました。ところが、塩分が多いなど耕作に適さない土地で、作物が植え付けられるまで、家族総出の苦労が続いたとあります。
経済成長により工場用地が必要になると、昭和36(1961)年には製鉄所が農地を転用してほしいと要望し、準備がすすみました。ところが会社は倒産、工業用地化への計画は頓挫しました。
空白の年月を過ごすなか、昭和45(1970)年前後に苦労して農業を再開する個人や町議会の動きなどがあり、実成新開は再び農地として整備されることになりました。昭和57(1982)年に処理方針が町、入植者、県の間で合意に達し、翌58(1983)年「農業構造改善事業」が導入されました。現地に残る朽ち果てた看板がその証でしょうか。
昭和59(1984)年には「実成果樹生産組合」が発足しましたが、新聞記事にあるように令和6(2024)年組合解散、現在は4軒が個別に生産と販売を行っています。
入手したイチジクはそのうちの1つ。戦後80年の人々の営みが、この実りを支えています。